そしてだまされたものの罪は、ただ単にだまされたという事実そのものの中にあるの ではなく、あんなにも造作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を 失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになつてしまつていた国民全体の文 化的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本体なのである。このことは、過去 の日本が、外国の力なしには封建制度も鎖国制度も独力で打破することができなかつ た事実、個人の基本的人権さえも自力でつかみ得なかつた事実とまつたくその本質を 等しくするものである。

「だまされていた」といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだま されるだろう。いや、現在でもすでに別のうそによつてだまされ始めているにちがい ないのである。

伊丹万作 - 戦争責任者の問題

西洋を真似、東洋に固執する、それが今日の若き日本人の多重人格性なのです。変わ りゆく日本の顔なのです。日本の若者達は父親的象徴であった天皇の存在を失った今 、日本的なものに反発する様になりました。かつては神聖だった家族にさえも。日本 はまるで一つの大きな崩壊家庭の様だと言われています。若者たちは過去から切り離 され、現在に幻滅し、未来に明確な目標を見つけられないのです。

アメリカのドキュメンタリー - NHKスペシャル カラーでよみがえる東京~不死鳥都市の100年~

元来日本人には理想なく強きものに従ひ其日ゝゝを気楽に送ることを第一となすなり 。今回の政治革新も戊辰の革命も一般の人民に取りては何等の差別もなし。

永井荷風 - 摘々録 断腸亭日乗